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偽物の金のネックレス

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「偽物の金のネックレスを買ってしまった」
そんなニュースをみました。

実は、私も騙されたことがありまして…
30年も前の話です。

埼玉県での出来事

仕事の都合で埼玉県に来ていました。
松山だったかな。
サービスエリアに車を停めて仮眠していたときのことです。

車の窓を、トントンと叩く音がしました。
目を覚ますと、気の優しそうなおじさんがいました。

「お兄ちゃん、ちょっと話を聞いて」
面識のない他人にいきなり声をかけられる。
それだけで怪しいのですが…

当時の私は無知でありました。
なんの疑いもなくそのおじさんの話に耳をかたむけたのでした。

無知な私

「お兄ちゃん、あんただけ特別!
通常価格が30,000円。
今だけ限定だよ。
10,000円で、金のネックレスが買えるよ」

限定という初歩的なマーケティングに引っかかる私。
人を疑うことを知らない私。
彼女にプレゼントしようと無邪気に思いました。

偽物の金のネックレスを即買い。
大事にカバンにしまいました。
偽物とは知らずに。

彼女の喜ぶ顔がみたい。
誇らしげに地元に帰りました。

彼女の優しさ

地元に帰りさっそく彼女に会いました。
彼女の笑顔がみたい!

自信満々にプレゼントを渡しました。
「埼玉県で金のネックレスを買ってきたよ」
誇らしげに彼女の顔をみました。

彼女の様子がおかしい。
どうしたんだろう?
「これ偽物だよ」

悔しいというか、情けないというか。
人が人を騙す。
騙される。
それを身をもって経験したのでした。

永遠のネックレス

「私のために買ってきてくれたの?
その気持ちが嬉しい」
彼女は私にそう言いました。

「ごめんね。
そのネックレスは捨てるから」
多分、私は悲しくて泣きそうな顔だったと思います。

「似合う?」
彼女は偽物のネックレスを身に付けたのでした。
「その気持ちが嬉しいの」
私を抱きしめる彼女。

彼女の優しさに泣きそうな私。
暖かさに、胸が熱くなりました。

偽物のネックレスが彼女の愛に包まれたネックレスに変わったのでした。

結局、彼女とは別れることになるのですが…
別れるその日までその偽物のネックレスを身に付けてくれていました。

あれから30年。
懐かしな〜。
あの偽物の金のネックレス、彼女の愛に包まれたネックレスは
今も私の心の中に大事にしまってあります。